つれづれなるままに

つれづれなるままに お気に入りなどを

~セロ弾きのゴーシュ~-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

ゴーシュもすこしぐるぐるして来ましたので、「さあこれで許してやるぞ」と云いながらようようやめました。 すると猫もけろりとして「先生、こんやの演奏はどうかしてますね。」と云いました。 セロ弾きはまたぐっとしゃくにさわりましたが何気ない風で巻た…

~セロ弾きのゴーシュ~-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

すると猫は肩《かた》をまるくして眼をすぼめてはいましたが口のあたりでにやにやわらって云いました。「先生、そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。それよりシューマンのトロメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから。」「生意気なことを…

~セロ弾きのゴーシュ~-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

みんなはおじぎをして、それからたばこをくわえてマッチをすったりどこかへ出て行ったりしました。ゴーシュはその粗末《そまつ》な箱《はこ》みたいなセロをかかえて壁《かべ》の方へ向いて口をまげてぼろぼろ泪《なみだ》をこぼしましたが、気をとり直して…

~セロ弾きのゴーシュ~-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかではいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。 ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度…

~風野又三郎~「九月十日」 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月十日 「ドッドド、ドドウド、ドドウド、ドドウ、 ああまいざくろも吹《ふ》き飛ばせ、 すっぱいざくろも吹き飛ばせ、 ドッドド、ドドウド、ドドウド、ドドウ ドッドド、ドドウド、ドドウド、ドドウ。」 先頃《せんころ》又三郎から聴《き》いたばかりの…

~風野又三郎~「九月九日」 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月九日 「北極は面白いけれどもそんなに永くとまっている処《とこ》じゃない。うっかりはせまわってふらふらしているとこなどを、ヘルマン大佐になど見られようもんならさっそく、おいその赤毛、入れ、なんて来るからねえ、いくら面白いたって少し疲れさえ…

女性の薄毛に話題の髪の美容液が凄い

なんと世界毛髪研究会議でコロンビア大学などの研究機関と並び最優秀賞を受賞した育毛理論を採用!世界に認められる実績で開発された薬用育毛剤が、第7回世界毛髪研究会議最優秀賞受賞「Kenomika(ケノミカ)」です。 ◆世界が認めた育毛理論育毛サイクルの指…

~風野又三郎~「九月八日」-5 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

『あすこはグリーンランドだよ。』僕たちは話し合うんだ。いままでどこをとんでいたのかもう今度で三度目だなんていう少し大きい方の人などが大威張《おおいばり》でやって来ていろいろその辺のことなど云うんだ。『そら、あすこのとこがゲーキイ湾だよ。知…

~風野又三郎~「九月八日」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

とずうっと下の方で聞えたりする。 二日ばかりの間に半分ぐらいになってしまった。僕たちは新らしい仲間と又手をつないでお互顔を見合せながらどこまでもどこまでも北を指して進むんだ。先頃《せんころ》僕行って挨拶《あいさつ》して来たおじさんはもう十六…

~風野又三郎~「九月八日」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

けれどものぼって行くたってそれはそれはそおっとのぼって行くんだよ。椰子の樹の葉にもさわらず魚の夢もさまさないようにまるでまるでそおっとのぼって行くんだ。はじめはそれでも割合早いけれどもだんだんのぼって行って海がまるで青い板のように見え、そ…

~風野又三郎~「九月八日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「わがる。」一年生の子が顔を赤くして叫びました。「わかるかね。僕は大循環のことを話すのはほんとうはすきなんだ。僕は大循環は二|遍《へん》やったよ。尤《もっと》も一遍は途中《とちゅう》からやめて下りたけれど、僕たちは五遍大循環をやって来ると…

~風野又三郎~「九月八日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)c

九月八日 その次の日は大へんいい天気でした。そらには霜《しも》の織物のような又白い孔雀《くじゃく》のはねのような雲がうすくかかってその下を鳶《とんび》が黄金《きん》いろに光ってゆるく環《わ》をかいて飛びました。 みんなは、「とんびとんび、と…

~風野又三郎~「九月七日」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「ね、そら、僕たちのやるいたずらで一番ひどいことは日本ならば稲を倒すことだよ、二百十日から二百二十日ころまで、昔《むかし》はその頃ほんとうに僕たちはこわがられたよ。なぜってその頃は丁度稲に花のかかるときだろう。その時僕たちにかけられたら花…

~風野又三郎~「九月七日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「僕たちが世界中になくてもいいってどう云うんだい。箇条《かじょう》を立てて云ってごらん。そら。」 耕一は試験のようだしつまらないことになったと思って大へん口惜しかったのですが仕方なくしばらく考えてから答えました。「汝《うな》などぁ悪戯ばりさ…

~風野又三郎~「九月七日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月七日 次の日は雨もすっかり霽れました。日曜日でしたから誰《たれ》も学校に出ませんでした。ただ耕一は昨日又三郎にあんなひどい悪戯《いたずら》をされましたのでどうしても今日は遭《あ》ってうんとひどくいじめてやらなければと思って自分一人でもこ…

~風野又三郎~「九月六日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

ところが間もなく又木のかぶさった処を通るようになりました。それは大へんに今までとはちがって長かったのです。耕一は通る前に一ぺんその青い枝を見あげました。雫は一ぱいにたまって全く今にも落ちそうには見えましたしおまけに二度あることは三度あると…

~風野又三郎~「九月六日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月六日 一昨日《おととい》からだんだん曇って来たそらはとうとうその朝は低い雨雲を下してまるで冬にでも降るようなまっすぐなしずかな雨がやっと穂《ほ》を出した草や青い木の葉にそそぎました。 みんなは傘《かさ》をさしたり小さな簑《みの》からすき…

~風野又三郎~「九月五日」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

ところが博士は落ちついてからだを少しまげながら海の方へ手をかざして云ったねえ『うん、けれどもまだ暴風というわけじゃないな。もう降りよう。』僕はその語《ことば》をきれぎれに聴《き》きながらそこをはなれたんだそれからもうかけてかけて林を通ると…

~風野又三郎~「九月五日」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

次の日も九時頃僕は海の霧《きり》の中で眼がさめてそれから霧がだんだん融《と》けて空が青くなりお日さまが黄金《きん》のばらのようにかがやき出したころそろそろ陸の方へ向ったんだ。これは仕方ないんだよ、お日さんさえ出たらきっともう僕たちは陸の方…

~風野又三郎~「九月五日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「僕たちの仲間はみんな上海と東京を通りたがるよ。どうしてって東京には日本の中央気象台があるし上海には支那の中華《ちゅうか》大気象台があるだろう。どっちだって偉《えら》い人がたくさん居るんだ。本当は気象台の上をかけるときは僕たちはみんな急ぎ…

~風野又三郎~「九月四日」-3 「九月五日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

『ああ竜《りゅう》だ、竜だ。』みんなは叫んだよ。実際下から見たら、さっきの水はぎらぎら白く光って黒雲の中にはいって、竜のしっぽのように見えたかも知れない。その時友だちがまわるのをやめたもんだから、水はざあっと一ぺんに日詰の町に落ちかかった…

~風野又三郎~「九月四日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「切るのだないのか。」一郎がたずねました。「切るのじゃないさ、血が出るだけさ。痛くなかったろう。」又三郎は嘉助に聴きました。「痛くなかった。」嘉助はまだ顔を赤くしながら笑いました。「ふん、そうだろう。痛いはずはないんだ。切れたんじゃないか…

~風野又三郎~「九月四日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月四日 「サイクルホールの話聞かせてやろうか。」 又三郎はみんなが丘の栗の木の下に着くやいなや、斯《こ》う云っていきなり形をあらわしました。けれどもみんなは、サイクルホールなんて何だか知りませんでしたから、だまっていましたら、又三郎はもど…

~風野又三郎~「九月三日」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「弟の方はまるで小さいんだ。その顔の赤い子よりもっと小さいんだ。その小さな子がね、まるでまっ青になってぶるぶるふるえているだろう。それは僕たちはいつでも人間の眼《め》から火花を出せるんだ。僕の前に行ったやつがいたずらして、その兄弟の眼を横…

~風野又三郎~「九月三日」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

すると又三郎はこんどは少し怒《おこ》りました。「お前たちはだめだねえ。なぜ人のことをうらやましがるんだい。僕だってつらいことはいくらもあるんだい。お前たちにもいいことはたくさんあるんだい。僕は自分のことを一向考えもしないで人のことばかりう…

~風野又三郎~「九月三日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「汝《うな》ぃの叔父さんどごまで行く。」「僕の叔父さんかい。叔父さんはね、今度ずうっと高いところをまっすぐに北へすすんでいるんだ。 叔父さんのマントなんか、まるで冷えてしまっているよ。小さな小さな氷のかけらがさらさらぶっかかるんだもの、その…

~風野又三郎~「九月三日」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

九月三日 その次の日は九月三日でした。昼すぎになってから一郎は大きな声で云《い》いました。「おう、又三郎は昨日|又《また》来たぞ。今日も来るかも知れないぞ。又三郎の話聞きたいものは一緒《いっしょ》にあべ。」 残っていた十人の子供らがよろこん…

~風野又三郎~「九月二日」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「そうだ。おら去年烏瓜の燈火《あかし》拵《こさ》えた。そして縁側《えんがわ》へ吊《つる》して置いたら風吹いて落ちた。」と耕一が言いました。 すると又三郎は噴《ふ》き出してしまいました。「僕お前の烏瓜の燈籠を見たよ。あいつは奇麗《きれい》だっ…

~風野又三郎~「九月二日」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「昨日|何《な》して逃げた。」「逃げたんじゃないや。昨日は二百十日だい。本当なら兄さんたちと一緒にずうっと北の方へ行ってるんだ。」「何《な》して行かなかった。」「兄さんが呼びに来なかったからさ。」「何て云う、汝《うな》の兄《あい》※[#小書…

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