つれづれなるままに

つれづれなるままに お気に入りなどを

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-11 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「ええ、もうこの辺から下りです。何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから容易じゃありません。この傾斜《けいしゃ》があるもんですから汽車は決して向うからこっちへは来ないんです。そら、もうだんだん早くなったでしょう。」さっきの老人…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-10 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

(こんなしずかないいとこで僕はどうしてもっと愉快《ゆかい》になれないだろう。どうしてこんなにひとりさびしいのだろう。けれどもカムパネルラなんかあんまりひどい、僕といっしょに汽車に乗っていながらまるであんな女の子とばかり談《はな》しているん…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-9 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

(どうして僕《ぼく》はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちを…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-8 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

川は二つにわかれました。そのまっくらな島のまん中に高い高いやぐらが一つ組まれてその上に一人の寛《ゆる》い服を着て赤い帽子《ぼうし》をかぶった男が立っていました。そして両手に赤と青の旗をもってそらを見上げて信号しているのでした。ジョバンニが…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-7 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

だまってその譜《ふ》を聞いていると、そこらにいちめん黄いろやうすい緑の明るい野原か敷物かがひろがり、またまっ白な蝋《ろう》のような露《つゆ》が太陽の面を擦《かす》めて行くように思われました。「まあ、あの烏《からす》。」カムパネルラのとなり…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-6 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「さあ、向うの坊《ぼっ》ちゃんがた。いかがですか。おとり下さい。」 ジョバンニは坊ちゃんといわれたのですこししゃくにさわってだまっていましたがカムパネルラは「ありがとう、」と云いました。すると青年は自分でとって一つずつ二人に送ってよこしまし…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-5 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

そこらから小さないのりの声が聞えジョバンニもカムパネルラもいままで忘れていたいろいろのことをぼんやり思い出して眼《め》が熱くなりました。(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかったろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。それよりも、おっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみ…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「あの人どこへ行ったろう。」カムパネルラもぼんやりそう云っていました。「どこへ行ったろう。一体どこでまたあうのだろう。僕《ぼく》はどうしても少しあの人に物を言わなかったろう。」「ああ、僕もそう思っているよ。」「僕はあの人が邪魔《じゃま》な…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「これは三次空間の方からお持ちになったのですか。」車掌がたずねました。「何だかわかりません。」もう大丈夫《だいじょうぶ》だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。「よろしゅうございます。南十字《サウザンクロス》へ着き…

~銀河鉄道の夜~「九、ジョバンニの切符」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「九、ジョバンニの切符」 「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」 窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四|棟《むね》ばかり立って、その一つの平屋根の上…

~銀河鉄道の夜~「八、鳥を捕る人」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「あすこへ行ってる。ずいぶん奇体《きたい》だねえ。きっとまた鳥をつかまえるとこだねえ。汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云った途端《とたん》、がらんとした桔梗《ききょう》いろの空から、さっき見たような鷺が、まるで雪の…

~銀河鉄道の夜~「八、鳥を捕る人」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「いいえ、どういたしまして。どうです、今年の渡《わた》り鳥《どり》の景気は。」「いや、すてきなもんですよ。一昨日《おととい》の第二限ころなんか、なぜ燈台の灯《ひ》を、規則以外に間〔一字分空白〕させるかって、あっちからもこっちからも、電話で…

~銀河鉄道の夜~「八、鳥を捕る人」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「鷺を押し葉にするんですか。標本ですか。」「標本じゃありません。みんなたべるじゃありませんか。」「おかしいねえ。」カムパネルラが首をかしげました。「おかしいも不審《ふしん》もありませんや。そら。」その男は立って、網棚から包みをおろして、手…

新開発のエイジング対策、スキンケアの新商品が凄いらしい

◆◆ブレイクタイム◆◆ =新開発のエイジング対策、スキンケアの新商品が凄いらしい= このところ、最新技術により開発されたエイジング対策、スキンケアの新商品で、メディアで話題、ネットの口コミで注目度急上昇のものを調べてみました。 「肌を熟考するスキ…

~銀河鉄道の夜~「七、北十字とプリオシン海岸」-4 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「そこのその突起《とっき》を壊《こわ》さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」 見ると、その白い柔《やわ》らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣《けもの…

~銀河鉄道の夜~「七、北十字とプリオシン海岸」-3 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌《てのひら》にひろげ、指できしきしさせながら、夢《ゆめ》のように云っているのでした。「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」「そうだ。」どこでぼくは、そんなこと習ったろうと思いながら…

~銀河鉄道の夜~「七、北十字とプリオシン海岸」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいまし…

~銀河鉄道の夜~「七、北十字とプリオシン海岸」-1 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「七、北十字とプリオシン海岸」 「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」 いきなり、カムパネルラが、思い切ったというように、少しどもりながら、急《せ》きこんで云《い》いました。 ジョバンニは、(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠…

~銀河鉄道の夜~「六、銀河ステーション」-2 お気に入りの作品とともに(著作権切れ)

「ああしまった。ぼく、水筒《すいとう》を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」そして、カムパネルラは、円い板…