2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
九月八日 その次の日は大へんいい天気でした。そらには霜《しも》の織物のような又白い孔雀《くじゃく》のはねのような雲がうすくかかってその下を鳶《とんび》が黄金《きん》いろに光ってゆるく環《わ》をかいて飛びました。 みんなは、「とんびとんび、と…
「ね、そら、僕たちのやるいたずらで一番ひどいことは日本ならば稲を倒すことだよ、二百十日から二百二十日ころまで、昔《むかし》はその頃ほんとうに僕たちはこわがられたよ。なぜってその頃は丁度稲に花のかかるときだろう。その時僕たちにかけられたら花…
「僕たちが世界中になくてもいいってどう云うんだい。箇条《かじょう》を立てて云ってごらん。そら。」 耕一は試験のようだしつまらないことになったと思って大へん口惜しかったのですが仕方なくしばらく考えてから答えました。「汝《うな》などぁ悪戯ばりさ…
九月七日 次の日は雨もすっかり霽れました。日曜日でしたから誰《たれ》も学校に出ませんでした。ただ耕一は昨日又三郎にあんなひどい悪戯《いたずら》をされましたのでどうしても今日は遭《あ》ってうんとひどくいじめてやらなければと思って自分一人でもこ…
ところが間もなく又木のかぶさった処を通るようになりました。それは大へんに今までとはちがって長かったのです。耕一は通る前に一ぺんその青い枝を見あげました。雫は一ぱいにたまって全く今にも落ちそうには見えましたしおまけに二度あることは三度あると…
九月六日 一昨日《おととい》からだんだん曇って来たそらはとうとうその朝は低い雨雲を下してまるで冬にでも降るようなまっすぐなしずかな雨がやっと穂《ほ》を出した草や青い木の葉にそそぎました。 みんなは傘《かさ》をさしたり小さな簑《みの》からすき…
ところが博士は落ちついてからだを少しまげながら海の方へ手をかざして云ったねえ『うん、けれどもまだ暴風というわけじゃないな。もう降りよう。』僕はその語《ことば》をきれぎれに聴《き》きながらそこをはなれたんだそれからもうかけてかけて林を通ると…
次の日も九時頃僕は海の霧《きり》の中で眼がさめてそれから霧がだんだん融《と》けて空が青くなりお日さまが黄金《きん》のばらのようにかがやき出したころそろそろ陸の方へ向ったんだ。これは仕方ないんだよ、お日さんさえ出たらきっともう僕たちは陸の方…
「僕たちの仲間はみんな上海と東京を通りたがるよ。どうしてって東京には日本の中央気象台があるし上海には支那の中華《ちゅうか》大気象台があるだろう。どっちだって偉《えら》い人がたくさん居るんだ。本当は気象台の上をかけるときは僕たちはみんな急ぎ…
『ああ竜《りゅう》だ、竜だ。』みんなは叫んだよ。実際下から見たら、さっきの水はぎらぎら白く光って黒雲の中にはいって、竜のしっぽのように見えたかも知れない。その時友だちがまわるのをやめたもんだから、水はざあっと一ぺんに日詰の町に落ちかかった…