2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧
「六、銀河ステーション」 そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍《ほたる》のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないよう…
「五、天気輪の柱」 牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星《おおぐまぼし》の下に、ぼんやりふだんよりも低く連って見えました。 ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼって行きました。まっく…
空気は澄《す》みきって、まるで水のように通りや店の中を流れましたし、街燈はみなまっ青なもみや楢《なら》の枝で包まれ、電気会社の前の六本のプラタヌスの木などは、中に沢山《たくさん》の豆電燈がついて、ほんとうにそこらは人魚の都のように見えるの…
「四、ケンタウル祭の夜」 ジョバンニは、口笛を吹いているようなさびしい口付きで、檜《ひのき》のまっ黒にならんだ町の坂を下りて来たのでした。 坂の下に大きな一つの街燈が、青白く立派に光って立っていました。ジョバンニが、どんどん電燈の方へ下りて…
「三、家」 ジョバンニが勢《いきおい》よく帰って来たのは、ある裏町の小さな家でした。その三つならんだ入口の一番左側には空箱に紫《むらさき》いろのケールやアスパラガスが植えてあって小さな二つの窓には日覆《ひおお》いが下りたままになっていました…
「二、活版所」 ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組の七八人は家へ帰らずカムパネルラをまん中にして校庭の隅《すみ》の桜《さくら》の木のところに集まっていました。それはこんやの星祭に青いあかりをこしらえて川へ流す烏瓜《からすうり》を取りに行…
銀河鉄道の夜宮沢賢治 「一、午后の授業」 「ではみなさんは、そういうふうに川だと云《い》われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊《つる》した大きな黒い星座の図の、上…